こんにちは、hoshi’s-noteです。
2年前、僕は急性リンパ芽球性白血病という診断を受け、突然日常を失いました。
診断を受けた瞬間は頭が真っ白になりましたが、すぐに頭をよぎったのは自分の体よりも「お店とお客さまのこと」でした。
「明日からの予約はどうしよう」 「家族にはどう伝えたらいいのか」
医師からは『治療には最低でも8ヶ月はみておいてください』と。
27年間の美容師人生で、これほどまでに長くハサミを置いたことはありません。
入院治療と自宅療養で闘病生活は1年に及びました。
でも、僕の心配をよそに、サロンの灯は消えませんでした。
そこには、僕一人の力では到底成し遂げられなかった、家族と仲間の献身的な支えがありました。
今回は、僕が治療に専念できた本当の理由をお話しします。
その前に、僕が個人事業主として経営している美容室のことを簡単にお話しします。
- アシスタントの妻と2人で営業している小さなサロン
- 東京都心で12年
- 妻はアシスタントレベルなのでカットはできません
- 僕がいないと基本的には通常営業ができません
という状態で、とても1年も休んでられません。
1年も休んで平気なのか?普通は潰れるでしょ。
医師『入院治療に最低8ヶ月。それと、仕事は辞めないでくださいね』
医師から言われた入院治療8ヶ月。退院してからの自宅療養で最低半年。うまくいって仕事復帰まで1年2ヶ月です。
美容室に限らずでしょうが、店舗を1年も休業したら潰れるのが普通でしょう。
お客様に「1年髪切らず待っていてください!」なんて言えません。
店舗は賃貸物件。大家さんに「1年分の家賃支払い待ってください」とも言えません。
休んでいても家賃は発生するし、1年もカットできなければお客様も離れます。
僕は思いました。
「店閉めるしかないかぁ…」と。
でも、医師から仕事を辞めるなと言われたときは、内心は「どうやって続けんの?!簡単に言うなよ!」と思いました。それに、そもそも生きてられるもんなの?とも。
しかも『今日から入院してください。ベッドは確保してあります』と。
いやいや、何言ってんの?無理に決まってるでしょ。明日も予約入ってるし。
なので「さすがにこの後このまま入院はちょっと…明日1日ください。明後日からちゃんと入院しますので」と伝えました。
とりあえず、ここからが大忙し。1日で家族への報告と説明。お店やお客様への対応をやらなければなりません。
さっき白血病と言われ、頭は混乱中・・・
大病を親に伝える
「おれ、白血病だって・・・」
親より先に死ぬかもしれない病気になってしまったことを伝える。これがすごい嫌でしたね。
でも、うちの両親は「治療頑張ってこい!」「大丈夫よ。頑張んなさいよ〜」と涙も見せずに送り出してくれました。
泣きたい気持ちを堪えていたこと、僕にはわかっていました。
僕も「まぁ、ちょっと長いけど大丈夫だよ。そんな心配しなくていいから」と。
うちの両親は凄いなぁと思うのが、余計なことは一切聞かないし、言わないこと。
きっと「店は?今後どうするんだ?!」「なんか考えてるのか?!」と聞きたかったでしょうね。
家族は本当に闘病中の支えでしたね。
仕事のパートナーでもある妻と相談
僕が入院している間、1番の支えとなってくれたのは妻でした。
そして、1番涙を流していたのも妻。
そりゃそうですよね。
なんにせよ、僕がいないとサロンが回りません。妻だけではカラー専門店でなんとか営業できるレベル。
とにかく、明日も明後日も予約入ってるし、お客様に事情をお知らせしないと。
時間がありません。少しだけ悩みました。
僕「もう、白血病ですぐに入院が必要ということをお客様に伝えよう!これが1番すぐ伝わるよ」
妻「そうだね」
お客様にお伝えしたのは、
- 僕が白血病になったこと
- とりあえず、しばらくは妻がサロンにいること
- カラーだけなら対応できること
- しばらく休業する予定
- 今後のことはまた改めてお知らせします
これをメールで一斉送信しました。
入院してすぐに連絡が取れなくなるような状態になるわけではありません。(明日の)入院までにやることはまだまだあります。
なので、ここからは入院の準備。
こんな長期で入院なんてしたことありません。病院から渡された入院パンフレットを見ながら、買い出しに行ったり手分けして準備します。
いざ、入院!!
まさかの美容師仲間たちのヘルプ
そして、僕を驚かせ、涙が出るほど嬉しかったのが美容師仲間の存在です。
自分たちの仕事の合間を縫って、僕のサロンのお客様を手分けして担当してくれたのです。
皆、僕の妻がカットできないことは知っています。
僕の店を残すために、僕のサロンに出勤して僕のお客様を担当してくれたのです。
最初、美容師仲間に事情を説明して、僕のお客様に美容師仲間のお店を紹介していいかと伝えました。
皆、快く承知してくれました。そんなことより、病気の方はどうなの?大丈夫なの?と、すごく心配してくれました。
そして「オマエの店、手伝える美容師仲間で連絡取り合って、俺らがオマエんとこで働くよ」と。
そうすることで、
- お客様を店に残せる
- お店に売り上げが入る
美容室を残せる=オマエが戻ってくる場所を守れる
と考えてくれたのです。
泣きました。嬉しくて泣きました。
病院に入ってしまった僕は、もうしばらく外に出ることはできません。
必要なものは家族に持ってきてもらうしかないし、出来るのはメッセージでのやり取りだけ。
無力です。
抗がん剤治療が始まるとしんどくなるので、もう妻と美容師仲間にほぼすべてを任せました。
皆、自分の店も家庭もあるのに休みの日を僕のサロンで働いてくれるのです。皆休みなしです。1年間もこれをやってくれたのです。
とにかく感謝しかないです。
僕の代わりにハサミを握り、お客様と店を守ってくれました。
真摯に向き合ってきたお客様との関係
独立開業前からのお客様、開業してから10年以上のお付き合いの客様、病気になる少し前からのお付き合いのお客様。
病気を治して復帰するのをずっと待ってくれていたお客様には感謝しかありません。
お守りやお手紙、お見舞いの品など本当にたくさんの思いをいただきました。
本当に皆様のおかげで辛い治療を乗り越えることができました。
誠意を持って真摯にお客様と向き合ってきて良かった。自分の仕事への信念は間違いじゃなかったと思えました。
ただ、すべてのお客様が復帰後に戻ってきてくれたわけではありません。
そして、復帰のお知らせ後すぐに戻ってきてくれたわけでもありません。
色んな事情があって当然です。とにかく、支持し続けてくださるお客様に感謝です。
27年間のキャリアで築いてきたもの
病気になって気づいたことがあります。
それは、美容師として27年かけて僕が築いてきたのは、技術や売上だけではなかったということです。
本当に困った時に助けてくれる仲間。
そして、支持して待ってくれていたお客様。
人とちゃんと向き合い、真面目に仕事を続けてきてよかったと思いました。
一人で頑張りすぎていた時期もありましたが、結局人は一人では生きていけません。そして、誰かに頼ることは弱さでも恥ずかしいことでもありません。
会計士さんも助けてくれたその一人
独立開業前から相談し、開業してから10年以上(病気になったとき)の付き合いです。
ずっと事業主として僕のやることを見てきてくれた人です。いい時も大変な時も知っています。
「とにかく治療に専念してください」「お店のことは大丈夫。私たちがサポートするので心配しないでください」
心強い言葉をいただきました。
おかげでお店も潰れることなく、なんとか維持できました。
信頼できる会計士さんとは、個人事業主にとって本当に大切な存在です。
オーナーとして、もしもの時に備えて伝えたいこと
今、独立して頑張っているオーナーさんや個人事業主の美容師に伝えたいのは、信頼と繋がりの大切さです。
技術を磨くのと同じくらい、こうした人間関係を育むことが、最大のリスクマネジメントになるのだと僕は確信しています。
僕のサロンを守ってくれた妻、そしてピンチの時に助けてくれる仲間たち。 彼らへの感謝を胸に、僕は再びサロンに立つことができています。
この経験があるからこそ、今度は僕が誰かの力になりたい。
その想いが、今準備を進めている「訪問美容」へのきっかけにもなっています。
とんでもない病気になることは誰にでも起こりえることです。そして、仕事ができなくなるリスクは誰にでもあります。
僕ら個人事業主は会社勤めの方とは違います。何の保証もありません。
病気の入院治療費、店の固定費、自宅の賃料、借金返済、年金に保険料と働けなくてもお金はどんどん出ていきます。
万が一自分自身に何かあったときのことは考え、最低限の蓄えと準備はしておきましょう。こういった話もお役に立つかもしれません。また別の機会に書きたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。