美容師として独立したり、自分の美容室を持ったりすると、必ず一度は頭を悩ませるのが「予約のキャンセル問題」です。
SNSや業界誌でも「美容室はキャンセル料を取るべきか?」という議論が度々起こります。
無断キャンセルで売上が飛んでしまい、悔しい思いをした経験がある方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、僕自身は「キャンセル料は取らない」という方針でサロンを運営しています。
なぜ「キャンセル料を取らない」という選択をするのか
僕がキャンセル料を設定していない理由は、大きく分けて3つあります。根本にあるのは、お客様との「信頼関係」です。
1. お客様にも「どうしても行けない事情」がある
お客様の生活の背景には、さまざまな事情があります。お子さんの急な発熱、どうしても抜けられない仕事のトラブル、あるいはご自身の体調不良など、予測できないことは誰にでも起こります。
「楽しみにしていたけれど、泣く泣くキャンセルしなければならない」という状況のお客様に対して、キャンセル料というペナルティを課すことは、僕にはどうしても必要のない措置に思えるのです。
2. お互い様という「持ちつ持たれつ」の精神
僕たち美容師も人間です。どれほど体調管理に気をつけていても、急な病気で倒れてしまうことや、長期間サロンをお休みせざるを得ない事態が起こる可能性はゼロではありません。
僕の方から「大変申し訳ありませんが、体調不良で本日の予約をキャンセルさせてください」とお願いする日が来るかもしれない。そう考えると、やはり「お互い様」だという気持ちに行き着きます。
3. 「払います」と言ってくださるお客様との信頼関係の尊さ
長く通ってくださっているお客様の中には、やむを得ず当日キャンセルになってしまった次のご来店の際に「前回のキャンセル分も上乗せして払わせてください」と申し出てくださる方がいらっしゃいます。
もちろん、そのお気持ちだけをありがたく受け取り、お金はいただきません。
ですが、この「申し訳ないから払いたい」とお客様に思っていただける関係性こそが、キャンセル料という目先の現金よりも、何倍も価値のある僕の財産になっています。
新規集客メインの若手スタイリストはどうすべきか?
ここまで「キャンセル料は取らない」という僕の考えをお話ししましたが、これはあくまで「すでに顧客との信頼関係が築けているフェーズ」だから言えることでもあります。
もしあなたが、これから顧客を増やしていく若手スタイリストであったり、新規集客がメインの働き方をしているのであれば、話は少し変わってきます。
新規のお客様の中には、残念ながら無断キャンセルをする方が一定数いるのも事実です。そういった状況下では、以下のような自衛策を取ることは全く間違っていません。
- キャンセルポリシーを明記する: 予約サイトやSNSのプロフィールに「場合によってはキャンセル料が発生することがあります」と記載しておく。
- 抑止力として活用する: 実際に請求するかどうかは状況によりますが、記載しておくこと自体が、軽い気持ちのドタキャンを防ぐ抑止力として機能します。
まずは自分自身を守るためのルール(キャンセルポリシー)を設けながら、少しずつ「あなただからお願いしたい」と言ってくれる生涯顧客を見つけていく。これが、一番安全で健全なステップアップの方法だと思います。
まとめ、ルールよりも「心」で繋がるサロンへ
キャンセル料を取る・取らないに、業界としての明確な正解はありません。
経営者として数字を守るために、厳格なルールを設けることも一つの正しい経営判断です。
ですが、もしあなたが「お客様と長く、深く付き合っていきたい」と願うのであれば、ガチガチのルールで縛る前に、まずは目の前のお客様と「やむを得ない時はお互い様ですね」と笑い合えるような、温かい信頼関係を築くことに時間とエネルギーを注いでみたほうがいいです。
その目に見えない信頼の積み重ねが、結果的に「キャンセルされない美容師」への近道になるはずです。